城マイスター(Vol.6)

このコラムでは、私が尊敬する“城マイスター”の二人、小城小次郎さんと栗原響大君を紹介します。二人ともに城好きの方々であれば誰もが尊敬する、素晴らしいレジェンドです。

1. “城マイスター”

世の中に城好きの方は多いが、その道を究めることで既に“マイスター”の領域まで到達されている方がいらっしゃる。私の尊敬する“城マイスター”が二人いる。一人目は“城やり人”こと小城小次郎(おぎ こじろう)さん、もう一人が“お城博士ちゃん”こと栗原響大(くりはら ひびき)君である。ブログやTwitterでの発信だけでなく、数多くのTV番組に出演されている。城好きであれば、恐らく知らない人はいない有名人である。

 

2.“城やり人”

小城小次郎さんは自身のことをそう称している。「城は、訪ねるものでもあり、見るものでもあり、感じるものでもあり、調べるものでもあり、集うものでもあり、語るものでもあり、思うものでもあり、撮るものでもあり…到底一言では言い表せないものなので、城は、『やる』」ものだ、というのが持論です」。ブログではそんな自己紹介がなされている。城を「やる」という表現自体に秀逸な文学的センスが感じられるとともに、なぜそういう表現に至ったのかという思考もよく理解できる。

小城さんの存在を初めて知ったのは、日本城郭検定試験にチャレンジをしている最中であった。2014年(平成26年)6月の試験で準1級<武者返級>に合格した後、最高峰の1級の試験にチャレンジを続けたが、全く歯が立たない。さてさてこの先どうやって城の勉強を掘り下げたらよいものかと、思い悩んでいたところ、小城さんに関する記事に出会った。東大卒の会社員(大手証券会社の金融マン)でありながら全国の城巡りを精力的に行い、日本城郭検定試験1級に全国1位で合格された、確かそのような内容であったと記憶している(すいません、今となってはその記事が探せませんでしたm(_ _)m)。

「お城を知って、巡って、つながるサイト『城びと』」の中で、「合格者、小城小次郎が伝授!日本城郭検定1級への手引き『お城を感動で覚えよう!』」(2019年3月7日付)という記事を見つけることができた。改めて、自分の曖昧だった記憶を確認することができたように思う。①お城に関する知識は、感動と一緒に頭の引き出しにしまうこと②お城に関する知識は、あらゆるものからどん欲に吸収すること…「お城めぐり本」や「お城の総合解説本」を読むこと。1級レベルに達するための勉強法が丁寧に解説されている。お城に関する知識をさらに一歩深めたいと思っている方々、是非一度目を通されてみてはいかがであろうか。

また、小城さんの城に関する発信力は群を抜いている。Twitterによれば、9月23日時点での登録城数は12,005、訪れた城に関する掲載記事は1,347。本当に驚異的な数である。「日本100名城」や「続日本100名城」はもちろんのこと、全く名前も聞いたことのない城が次から次へと登場する。一例を挙げると、岡山県の岩屋城、鳥取県の景石城、栃木県の村上城、岐阜県の顔戸城等々。己の不勉強をただただ恥じるばかりであるが、その引き出しの数の多さにとにかく驚かされる。

もちろん、ブログの記事の内容も素晴らしい。城の現状やアクセス、歴史などが克明に記録されている。城に出かけようと思い立った時(特にあまりメジャーとは言えない城に出かける時)には、是非一度小城さんのブログを覗いていただければと思う。

小城さんの訪城記事が、2000城に到達するのも時間の問題であろう。2000城到達を記念して“名球会”ならぬ“名城会”を是非とも創設してほしいものだ。Vol.4のとおり、「日本百名城」では「一城一城と丁寧に向き合うこと」を自分の矜持にしてきたが、小城さんは世間にあまり知られていない城に対しても、それを常に実践されている。本当に尊敬できるレジェンドである。

 

3.“お城博士ちゃん”

栗原響大君の存在を初めて知ったのは、2019年5月14日(火)20:00から放映された『TVチャンピオン極 日本名城マニア決定戦』というTV番組である。響大君は当時小学校4年生、城マニアの頂点を決めるクイズ番組の中で、歴戦の強者である大人たちを相手に全く臆することなく、堂々と渡り合っている姿に衝撃を受けた。MCからの「将来の夢とかあるかな?」という問いに対し、「目立たない城を目立たせるための、ガイド的なものをしたい」という答え。うーん、城好きのおっさんとしては、涙が出るような素晴らしいアンサーである。

響大君をさらに有名にしたのが、2019年12月7日(土)18:30からテレビ朝日系列で放送された『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』というテレビ番組である。オトナ顔負けの知識やスゴイ才能を携えた子どもたちが、“博士ちゃん(=先生役)”として出演するという番組で、この時から響大君は“お城博士ちゃん”と呼ばれるようになる。その後も響大君はこの『博士ちゃん』シリーズに度々出演を続けており、今や押しも押されぬ完全なレギュラーである(笑)。

響大君が城巡りを始めたのは小学校1年生の時から。番組の中で紹介されているが、世界遺産好きのお母様さんが「姫路城」に連れて行ったことがきっかけとなり、彼の“城スピリット”が目覚めたとか。彼の城好きを物心両面でサポートしているのがお母さんであることは間違いない。大人たちに囲まれても物怖じすることなく、かつ礼儀正しい受け答えをしている姿を見るにつけ、ご両親の教育が行き届いていることがよくわかる。

大人顔負けの知識量はもちろんだが、響大君のトーク力はさらにすごい!「難しいことをわかりやすく伝えること」。実はこれが大人になってもなかなかできない、大変難しい所作なのだが、既に響大君は小学生の段階でそれを実践している。コロナ禍で人々が苦しんでいる中、「お城に行って経済を回してほしい」というコメントが発信できる利発さ。“城マイスター”として、彼にはまだまだ計り知れない伸びしろがある。

さらに、Twitterの発信力もなかなかのものである。響大君からは時々「城クイズ」が出題される。ついこの間には、ブランコに乗った子供の向こうに櫓らしき建物が見える、実に良い写真がアップされていた。悔しいなぁ~、おっさんはどこの城なのか全くわからなかったよ(涙)。城とは直接関係のない小ネタ(お菓子、横浜ベイスターズ等)も面白い。恐らくお母さんが行き届いたフォローをされておられるのだと思うが、今や響大君のTwitterを見るのが私の日課になっている。

Twitterによれば、響大君が制覇した日本100名城は74城、続日本100名城は61城とのこと。どちらも完全制覇は時間の問題であろう。

 

4.両雄相並び立つ

そんな二人のレジェンドが相まみえたのが前記3の『TVチャンピオン極 日本名城マニア決定戦』というTV番組である。門、縄張、石垣、狭間や堀など、様々な映像問題が出題される中で、小城さんと響大君は正解を重ね、見事決勝に進出している。

ファイナルでは「日本100名城カルトクイズ」が出題されるが、最後まで手に汗を握る攻防となった。チャンピオンの栄冠は、“城娘”こといなもとかおりさんの手に輝くことになったが、番組の各パートで繰り広げられた小城さんと響大君の熱~い城トークは、実に見応えがあった。

番組の中では、次第に大きくなる雲海の城の映像を見て正解を当てる問題が出題されている。写真は竹田城

響大君は、小城さんのことを“師匠”と呼んでいるそうである。年齢を超えた二人のそんな繋がりは、本当に素晴らしいものだと思う。これからも二人の城マイスターの活躍に目が離せない。

👉 Vol.7  地震との戦い(その1)

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