“優秀な手下”(Vol.21)

日本百名城を制覇した身としては、当然のことながら、その記録(特に写真)をしっかりと残しておきたいと思っている。しかしながら、制覇までに足掛け12年を要してしまったこともあり、最初の頃の写真はほとんど残っていないか、画質が悪いものばかり。結局、もう一度また彼の地を訪れるしかないのかと、すっかり諦めの境地に至っていた。そんな自分に突如“救世主”が現れた。持つべき者は、やはり“優秀な手下”である。

1.完全制覇までの出来事

百名城制覇までの履歴については、既にコラムにしたところである(Vol.4)。平成20(2008)年からチャレンジを始めたが、その当時の携帯電話はまだガラケーだったし、持っていたデジカメも画質が悪いものだった。足かけ12年の間にパソコンも何台か入替えをしたこともあり、画像(写真)データがあちこちに散逸していた。正直、イケイケどんどんで“城攻め”をしている時には、データ保存のことまでには全く頭が回っていなかった。

極めつけは、平成30(2018)年の夏頃、いつも“城攻めの友”として持ち歩いていたタブレット端末を、酔っぱらった帰りの電車内で落としてしまったことである(正確には、最寄り駅に到着したのに気づいて慌てて飛び起き、車内に端末を置き忘れてしまった。全く持って情けない話である)。当然のことながら、家族からは白い目で見られる(涙)。精神的なダメージもさることながら、平成27(2015)年に攻略した10城、平成28(2016)年に攻略した8城、平成29(2017)年に攻略した12城分のデータなどが、一気に消失してしまった。まさに大きな「社会的損失」であった。

 

2.再発防止策

タブレット端末を買い替えるにあたり、酔った帰り道では二度と操作をしないという“掟”を作り、これを固く守るようにした。また、あちこちに散逸していた画像データを必死の思いで捜索し、遅ればせながらGoogleフォトの中に格納することによって、時系列的、体系的な整理ができるようにした。当然、パソコン内にもバックアップデータを残すように心がける。さらには携帯電話をiPhoneに機種変更をしたことで、画質の良い城の写真が安定して撮れるようになった。コストはかなりかかったものの、我ながら完璧な再発防止策を講じることができたと思っている(苦笑)。

以上の再発防止策を講じながら、平成31(2019)年4月末に無事ミッションコンプリート。令和の世になってから、ゆっくりと記録整理を始めた。一城ずつファルダを作りながら、お気に入りの写真を整理していく、言わずと知れた「日本百名城アルバム作り」である。作業を始めてみると、やはり城巡りを始めた当初の写真は画質が悪く、最近撮影したものと比較をすると明らかに見劣りしてしまう。また、先に発生した「社会的損失」によって失われた多くの城データは、どんなに頑張ったところで復活させるのは困難であった。そうとわかればなりふり構っていられない。多くの知人の方々にご協力をいただき、手元に残っている城写真を分けていただくことに成功! 姫路城、備中松山城、岡崎城、今治城、宇和島城など、数多くの名城の写真(クォリティーの高いもの)をアルバムに収めることができた。持つべきものは、やはり“城トモ”である。

だがしかし…。東北地方の城や山城、アクセスがあまり良くない所にある城などは、どうしても埋めることができない。その数およそ40。ふぅ~、これは覚悟を決めてもう一度現地を訪れるしかないのか…。こんな時、自分と同じ思いで城と丁寧に向き合い、これぞという写真を撮影してくれる、分身のような“手下”がいてくれればなあ~。

 

3.“手下”の出現

そんな私に救世主が現れた。息子である。幼い頃から城巡りへ連れて行く機会があり、「日本百名城スタンプ帳」を試しに買い与えたところ、スタンプが徐々に増えていくことに喜びを感じていたようだった。平成30(2018)年には、月山富田城⇒津山城⇒鬼ノ城⇒岡山城を巡る旅、そして日本百名城最大の難所と言われている根室半島チャシ群を巡る旅に、親子で出かけている。

彼が大学生になった時は、世の中はまさにコロナ一色、大学に出かけることが許されず、当然旅行どころではない。実に気の毒な、窮屈な学生生活だったように思う。そんな彼は、大学4年生になると一気に弾ける。毎月のように“城巡り”ツアーを自分で企画し、あちこちに出かけるようになった。今度はどっち方面? それなら、このアングルからこういうイメージの写真を撮ってきてもらえる? 手下と入念な打合せを行う。

実に良い仕事をしてくれる。彼の快進撃のお陰で、穴の開いていた百名城がどんどん埋まっていく。彼がプレゼントしてくれた写真の中で、私の一番のお気に入りは“犬山城”である。現存最古の天守、紅葉、そして抜けるような青空と白い雲。全体の構図が非常にバランス良く収まった、至極の一枚である。

怒涛の攻めによって、息子は日本百名城を70城制覇したそうである。この4月から社会人になったので、自由度は明らかに減ったものの、是非コンプリートに向けて頑張ってほしい。そして、私の方はアルバム完成まで残り12城となった。これなら自力で何とかなりそうな範囲だと思う。持つべき者はやはり“優秀な手下”である(笑)。

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